【REPORT】人とAIによるオーディオ・ビジュアル・ライブパフォーマンス「欲望する機械(マシン・デジラント)」 (第6回「デジタル・ショック」)

2月17日(金)、渋谷WWWにてライブ・パフォーマンス「欲望する機械(マシン・デジラント)」(第6回「デジタル・ショック」)が開催された。本イベントは、アンスティチュ・フランセ主催の日仏のメディアアートイベント”DIGITAL CHOC 2017”内のライブパフォーマンスイベント。
今回、日仏独の3カ国のアーティストが集結した本イベントの様子をダイジェストでお伝えする。

会場となったのはShibuya WWW
 

 
はじめに登場したのは、日本から徳井直生と、Qosmoが開発した人工知能DJのペア。AI-DJとHUMAN-DJによるBack to Back( *Back to Back : 二人のDJがそれぞれ相手の曲を受けて 交互に曲をかけるプレースタイル)を披露した。VJを担当したのはQosmo所属の堂園 翔矢。背景にはAIの楽曲解析がビジュアライズされ、AIの思考を覗いているような演出がされていた。AI-DJは、曲のつなぎを重ねるにつれどんどん成長し、フロアの空気も高まる中、AIのテンションが高ぶりすぎたためか、音が止まってしまうという、まるで人が起こしてしまうようなハプニングもあったが、終盤に差し掛かる頃にはかなりDJとして上達しオーディエンスを魅了させた。

また、その様子をBack to Backを通して感じ取り、AIとの掛け合いを楽しんでいた徳井氏。機械と人間が互いに触発し合う様を目の当たりにし、人間と機械のある意味ラフな関係性のあり方を提示されているようだった。
 

 
ドイツからは、コンテンポラリーアーティスト、MoritzSimonGeist(モーリッツ=サイモン・ガイスト)が来日。自身の作品である「Tripods One」によるハードコアなパフォーマンスを披露した。日常に存在する様々な電子機器たちが、彼の綿密な制御によって奏でる音色は、アナログ電子楽器に劣らない出音で観客の体を揺らしていた。また、時折見せる彼のおちゃめな様子から、自身の表現への愛情がにじみ出ているようだった。

最後に登場したのは、フランス生まれ、ベルリン在住のアーティストDavid Letellier(ダヴィッド・ルテリエ)。カンディング・レイ(Kangding Ray)の名でドイツの電子音響レーベル「ラスター・ノートン」に所属している彼は、カールステン・ニコライとの息の長いコラボレーションでも知られ、オーディオビジュアル・パフォーマンスからサウンド・インスタレーションまで、さまざまな媒体で表現を行っている。彼のモジュラーシンセサイザーから奏でられる音とそこに合わせジェネレイト映像が会場内を包み込み、観客全員が彼の生み出す宇宙へと引き込まれる感覚であった。演奏が終了すると不思議な浮遊感を感じ彼の宇宙に浸った余韻を感じた。

我々は、AIのDJプレイにに戸惑いを感じていたが、AIからすると、それらは分析したデータに乗っ取った完璧な処理であり、我々の感覚とAIの感覚がそもそも全く別のものであるということに気付かされた。また、機械のフィードバックに対して、友のように親しげな表情をみせていた演者たちから機械と人間のこれからの関係性に期待が膨らんだ。

今回のイベントで人間は人間、機械は機械として同じステージに立ち、それぞれの思考が交錯する中で新しい表現の形を垣間見ることができたのではないだろうか。結局機械とのコミュニケーションを欲しているのは人間であり、本イベントでは、機械たちをしっかり機械と捉えた上で、人間と機械の関わり方を音楽という媒体を通じて模索しているように思えた。
 
AI-DJを行ったQosmoは、AI-DJプロジェクトの開発の裏側のドキュメント映像の公開や「人工知能と表現の今」を伝えるWebポータルサイト “Create with AI” をスタートもしている。ぜひ興味を持った方はご覧いただきたい。
 
REPORT & MOVIE by DigitalVegital. (TSUYOSHI OTABE + KOMOMO KANAYAMA)
 

ライブ・パフォーマンス「欲望する機械(マシン・デジラント)」(第6回「デジタル・ショック」内開催)
日時:2017年2月17日(金) 19時開場/19時30分開演/22時30分終演(予定)

会場:渋谷WWW
〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町13-17 ライズビル地下
料金:一般3,500円、前売り・学生・会員3,000円(ドリンク別)
出演:Qosmo AI DJ + Nao Tokui (Back to Back set) / Visualization : Shoya Dozono,
Sonic Robots (Moritz Simon Geist), David Letellier (a.k.a Kangding Ray) / VJ : Akita Yoshiko, Albino Sound (DJ)
主催:アンスティチュ・フランセ東京
共催:東京ドイツ文化センター
助成:フランス・ドイツ文化基金
協力:株式会社Qosmo
チケット取り扱い:Peatix http://digitalchoclivemachine.peatix.com/

お問い合わせ:アンスティチュ・フランセ東京(03-5206-2500)

Nao Tokui 徳井直生
Qosmo代表取締役 , 博士 (工学)
東京大学工学系研究科博士課程修了。工学博士。
在学中から人工知能に基づいた音楽表現とユーザ・インタフェースの研究に従事するとともに、DJ/プロデューサとして活動。ソニーコンピュータサイエンス研究所パリ客員研究員などを経て、2009年にQosmoを設立。2015年には人工知能DJイベント「2045」をスタート。近作としては、AIを用いたBrian Enoのミュージックビデオの制作など。AIと人の共生による創造性の拡張の可能性を模索する。
Website : http://www.naotokui.net/
 

© David Letellier
 
David Letellier ダヴィッド・ルテリエ
1978年フランス生まれ、ベルリン在住のアーティスト。フランスとドイツで建築について学ぶ。カンディング・レイ(Kangding Ray)の名でドイツの電子音響レーベル「ラスター・ノートン」に所属。カーステン・ニコライとの息の長いコラボレーションでも知られるルテリエは、オーディオビジュアル・パフォーマンスからサウンド・インスタレーションまで、さまざまな媒体で表現を行う。建築、アート、音楽にまたがる彼のアプローチは、「動く形(フォルム)」としてのサウンドに関する探究であるといえる。Némo(パリ)、MediaRuimte(ブリュッセル)、Scopitone(ナント)等のヨーロッパのデジタル・アートフェスティバルで精力的に作品を発表している。
Website : http://www.davidletellier.net/
 

Tripods One and Moritz Simon Geist. Photo: David Pinzer © Sonic Robots
 
Moritz Simon Geist モーリッツ=サイモン・ガイスト
1981年生まれ。ドレスデン在住のドイツ人コンテンポラリー・アーティスト。クラシック音楽とロボット工学を学ぶ。3Dプリンターのスペシャリストでもあり、3Dプリンターを使って造形作品を作る。アーティスト・コレクティブSonic Robotsとして、エレクトロニック・ミュージックのパフォーマンスや、ロボッティック・サウンドインスタレーション、社会におけるロボットの進化についての討論など、さまざまなプロジェクトを展開している。これまでにアルス・エレクトロニカ(リンツ、2014年)、Transmediale(ベルリン、2013年)、マッピング・フェスティバル(ジュネーヴ)等で作品を発表。17日のイベントでは、未来派ロボティック・サウンド・インスタレーション「Tripods One」を使ったライブパフォーマンスを行う。
Website: http://sonicrobots.com/