【INTERVIEW】抽象と偶然、平面とマテリアルから生まれる、九島 優の世界。

先日、the blank galleryにて 個展「I know what you don’t know.」を行った 九島 優。日本画を専攻した九島は、グラフィックデザインやグラフィティなど、空間や奥行きのある要素も含めサイバースペースを感じさせる。これらは、画面構成的を手法を応用させながらも独自の作風として人々を魅了させる。今回、インタビューとして自身の創作や活動についてうかがった。

– 今回、行われた個展「I know what you don’t know.」について教えてください

大学を卒業し東京に出てきてから、およそ1年に一回のペースで作品を発表する機会を設けていました。今回の展示は「the blank gallery」のオーナーさんが、去年に尾久のギャラリー「OGUMAG」で個展をした時に観てくれたのが始まりでした。その後12月のアートフェア「the artfair+plus-ultra2016」への参加と紐付けた個展を企画していただき、1月に開催しました。

– 九島さんの作品は、デザイン的要素も感じますがそういったものに興味があったのでしょうか

グラフィックデザインやプロダクトなど見るのが好きで、高校生ぐらいまではデザイナーになろうと思っていました。高校が美術系の学校で、在学中にデザインのコースを選ぶこともできたのですが、受験向けの色彩構成を勉強するよりやっぱり絵が描きたくて、日本画を選択しました。日本画は平面的でどこかイラストっぽい部分が自分には合ってるような気がしていました。今の作風が決まってきたのは大学に入ってからなので、当時はそんなに考えていなかったのですが、純粋に美術作品を制作するというよりは絵画の手法の中でイラストだったりデザイン的な要素を入れられたらいいなと思って描いていました。

– インターネットの媒体などでの表現についてクリエーションの影響はあったのでしょうか

画家や美術作品から影響をうけるよりも先に、お絵描きBBSで絵を描いていたような方たちからたくさん刺激をうけていたので、イラストやデジタル表現などへの免疫をつけたまま美術の道に進んでしまい、それを制作に出していったら結果的に今の作風に落ち着いたと思います。僕らの世代はそういうきっかけが多いと思うのですが、大学では趣味は趣味、課題は課題という人が多かったのでせっかくのバックグラウンドが勿体ないなと感じていました。

– 描いたものをスキャンして素材としてデジタルで描くこともあるかと思うのですが、キャンバスを扱うこだわりみたいなのはありますか

キャンバス(木製パネル)を多く扱う理由は、紙はパネルに貼るものとか、絵は完成したら飾って展示するものだとか、古いのかもしれませんが絵=モノという感覚として残っていて。デジタルでイラストを描いている人も出力して展示とかやってほしいなって思うことがあるんですが、描いている人からしてみたら「それは何のためにやるんだろう」って思うのかもしれません。でもネットで見られるから実際に見る必要がないとか、そういうのは勿体ないと思っていて、「実物がある」ことが自分としては嬉しいというかテンションが上がる気がしています。最近、自分が絵を描くときはパネルは厚みがあるので、側面まで回って描くことしたりもしてて、そういうところに喜びを感じてたりしています。

– なるほど、マテリアル的な説得力があるということですね

紙じゃなくて、パネルは厚みがあるだけで、スクリーンの画面で見るのとは違うというか、影ができるとか、絵の具の厚みができたりすることで生まれる力みたいなのがあったりして。デジタルと違って解像度がないので、どこまでも自分の眼で近づけば近づくほど無限に拡大できたり、絵の具が混ざりあってるところを見ることができたりして、グラデーションとかはCGの方が綺麗につくれると思うんですけど、実際にアナログでやることにより価値を感じるというか、面白味を感じたりします。
情報量が多いから見ることの楽しみがあるというか、絵の体感度が高いという感じはしますね。

– 九島さんの作品を拝見してると抽象画的な側面もありながら彫刻的な側面も感じます。立体的なものを意識したりしてるのでしょうか

フチまで描くというのは、立体として扱うような感覚もある気もしますね。でも、彫っているというよりは包んでいる。パッケージングしているという感覚があります。
 
立体の他では、以前「QWERTY」というイベントでメインビジュアルの映像を作ってもらったとき、絵の具でつくったいろいろな質感だったり絵肌みたいなのを、スキャンしてパソコンでパスなどを編集して、映像素材として使えるように準備したんですけど、その時に映像をつくってくれた人が、絵の具のマテリアルだったり質感をわざとずらして、映像に落とし込んでいてくれてその人の理解力というか、そういうもので表現が映像として完成した部分もありました。

その映像をつくってもらったときは、自分が描いた1つ1つの要素が動いて、最後に、自分が描いたものに組み合わさり塊みたいなものになる映像だったんですが、そういうのではなく、要素要素がずっとループして散らばっていたりするのを、自分の絵でみられたら嬉しいです。でも自分は、方向性や形の組み合わせみたいなものを作品として作ってる部分があるので、バラバラな素材を用意してバラバラに動いてる映像をつくってもらったときに、それは自分の作品なのかと、不安というかそういうのを考えるところもあります。白黒で幾何学で絵の具のマテリアルを扱う作品は、別に少なくないというか、オリジナリティがあるというわけでもないので。やっぱり自分が1から絵の具でつくって、画面の上にオリジナルがないと自分は納得できないかもしれません。

– デジタル的な表現、アナログ的な感覚、それぞれの良さを横断してるような気もします

デジタルとアナログの応報でいうと、発生したグリッチをそのまま絵の具で再現するのみたいなのはあまり面白いとは思わないんですが、自分が意図して、意味わからなさを再現してるというか、「ここに何故四角を置いているのか」みたいなのを面白いなって思う部分はあります。予期せぬというか、例えばPC上のトラブルみたいなのが、怖い・面白いみたいな感じがあると思うんですが、自分がTumblrとか探したり見てたりして惹かれるのは、「なんでこうなっちゃうんだろう」というものです。一見わからないみたいな、モチーフがないというわけではなくて、なんでこういう構成になっちゃうんだろうというか、得体の知れないものをあえて作っているんだったら、それはカッコイイなって思ったりします。
 
結構、この作風も続けてきたので新しいこと違うこともやってみたいなって思うこともあります。どれだけ手放せるかなっていうのもありますけど。それこそ、ペインティングじゃなくて、彫刻とまではいかないですが立体とか色々とやりようがあるので、自分の持っている色の感覚や絵の具の感じを、他の手法に置き換えるというか、違うことやってるなって思わせたりできるのではないかなと思っています。

– 自分のこれまでの活動で感じたことについて教えてください

大学にいた時は、芸術系の界隈はあまり面白くないなって思ってました。銀座で高いお金を払ってギャラリーで何かやってもいまいちパッとしないなって印象だったので。コミティアに出してみたら、意外と反応があったりして、こういうところにも需要があるんだなって感じで。それで今回アートフェアに出してみたら、いいねって言ってもらえるようになったので、「そうなんだ」っていう気もしてます。自分がやっているものが、絵画なのか、イラストなのか、デザインなのか、グラフィティなのか、色々考えたことがあって。どの分野にもルールがあって、自分の作品がどれにも当てはまらないというか、そんな責任は負えないっていうのも感じてたりしてて。

自分の絵はどこにも居場所がないなと思っていたんですが、いろいろな人に見てもらううちに、意外と自分の場所というかニッチなものの役割があるのかなって思うようになってきました。

– 今後の展開などありましたら教えてください

2月ぐらいに出身である静岡に引っ越そうかなって思ってまして。アトリエじゃないですが、描く場所と飾る場所を作ろうと考えています。ギャラリー運営みたいな大きい責任感あることじゃなくて、もっと自分で作って自分で飾る場所があって、もし他の人の作家さんの作品を飾れたり、そこでやってほしいみたいな、そういう場所ができたらいいなと思うんです。いつも東京で展示していて、静岡で遠征的にやりたいなって思ってたんですけど、あまりそういう場所がなくて、あっても昔からの画廊みたいなのしかなくて、どこか空気が違うというか何か違うなって思うのがあったので、やってみたいなと思っています。ここでこういうことをやったら、カッコイイみたいなのが自分の頭の中でずっと思い描いています。山形に「GEA(ギア)」っていうカルチャーショップがあって、中心部からは離れたところに突然あるらしいんですが、なんでこんなところにあるんだろうとか、そこでやる勇気というか、そういう感じがカッコイイ気がしまして。そういうのは離れたところにあったほうが映える気がしていて、東京とか都会だと、想像しやすい部分があったりするんですがそこまで新しくないというか。発信するのはインターネットがあるのでどこにいっても、いろんな人に伝えることができるんですが、その場所というか実物があることが重要なのかなって思います。

– 最後に読んでる人へメッセージをお願いします

今まで見ていただいてる方は、かっこいいねって言ってくれるというか、見方を理解してくれてる感じがしていて。アートフェアやそういったところから初めて見てくれる方は、できれば深読みせず見ていただければいいなって思います。抽象っぽいので、この形はこういう風に見えるねみたいな意見を頂けたりするんですが、あまり読み解かず、その表面のまま見てもらえた方が自分の目指してる作品像に近づいてもらえるんじゃないかなって思います。

九島 優 個展 “I know what you don’t know.”
会場:the blank GALLERY
東京都渋谷区神宮前3-21-6 大崎ビル3F
会期:2017年1月7日(土)~19日(木)
平日:13:00-19:00
土日祝:12:00-19:00
休廊日:金曜日 ※最終日は18時まで
九島優
1991年生まれ
東北芸術工科大学 芸術学部 美術科 日本画コース卒業
 
個展
2016 UNNECESSARY VITAMINS (OGU MAG Gallery, Tokyo)
2015 THE GRAPHICS (“meee” Gallery, Tokyo)
グループ展・アートフェア
2016 the art fair +plus-ultra (Spiral Garden, Tokyo)
2016 Summer Group Show (THE blank GALLERY, Tokyo)