【REPORT】カナダ・モントリオール発祥の電子音楽とヴィジュアル・アートの祭典「MUTEK JP 2016」(後編)

2016年11月2日(水) – 4日(金)までの3日間、渋谷のShibuya WWWShibuya WWW XRed Bull Studios Tokyoの3会場にて「MUTEK JP 2016」が開催された。本イベントは、カナダ・モントリオール発祥の電子音楽とヴィジュアル・アートの祭典「MUTEK」が日本に初上陸したもの。
 
11月2日(水)のイベントリポートはこちらから

NEW HORIZONS With Carsten Nicolai + Olaf Bender
MODERATOR: SAWADO EIICHI/Presented by GOETHE-INSTITUT TOKYO

今回は11月3日にRed Bull Studios Tokyoにて行われた、raster nortonの20周年を記念した、Carsten Nicolai(Alva noto)とOlaf Bender(Byetone)のインタビューをお伝えします。

「今回のイベントではShibuya WWW Xという場所で行われましたが、感触はいかがでしたか?」

Olaf Bender
以前、Shibuya WWWでやったことはあったのですが、実際のところ、ソロやショーケースには狭い印象がありました。今回のShibuya WWW Xはフィットするサイズ感での空間という印象があります。
 
Carsten Nicolai
Shibuya WWWは素晴らしい空間と池田亮司から聞いてました。電子音楽というジャンルでは、スピーカーは楽器の一部(レゾナンスボディ)とも言って過言ではありません。特に、ラスターノートンの曲は高周波で作られている曲が多いため、実際にチェックの場面では、全てスタジオモニターで環境を確認しています。そういった状況づくりがかなり大事なのですが、今回の環境はそういう意味で、とても良かったと思います。

Olaf Bender
特に私の時はとてもいい状態でした。音をギリギリのラインまで上げたけど、他の場所はディストーションがかかってしまうんですが、そういった変化にも対応できていましたので、PAを信頼して進めることができました。
 
Carsten Nicolai
実際、昨晩エンジニアと話した時に、振動板が硬かったりしたけど、テストしながらやりました。笑

「20周年のshow caseでしたが、インスタレーション(white circle)についてお話しいただけますか」

Carsten Nicolai
そもそもは、このインスタレーションを行ったことがきっかけなんですが、こういったインスタレーションの活動を行うことで、CDをはじめとした音源をリリースする以外に20周年としての節目の中で、テクニカルでアーティスティックな活動も行なっています。
 
Olaf Bender
シンプルに、20周年という区切りの中で、どのようなアーカイブを行ったらいいかという点で考えてみました。今までの活動の特徴的な部分としては、新しいテクノロジーを使用したものが主でしたが、今回は、ネオン管を始めとした、ちょっとオールドスクールな表現も特徴的です。未来的で、新しいものを使うと、その部分にオーディエンスが集中してしまうこともあるので。

Carsten Nicolai
そうそう。フィジカルなオブジェクトも大事なんですよ。特に、最近の音楽はフィジカルじゃない部分があるように感じます。ラスターノートンは、デジタルドメインで作ってるので、そういった部分も考慮して、物に焦点を当ててますね。この作品は、様々なアーティストが表現を提供してくれているので、みんなが集まって1つの作品となっています。100本のネオン管や、音にリアクトする感覚、そういったたくさんのアーティストが1つの物体になっている様子が伝わると嬉しいです。

「フィジカルオブジェクトについてはいかがですか」

Carsten Nicolai
はじめに着手した時は、環境を作ろうと思ってました。そういったことはパフォーマンスと違うと思ってて。そういったことを考えると、最初はプロジェクションが良いと思ってたんですが、1本の長いネオンチューブがリアクトするほうが面白みがあったんで、ネオン管を使う今回の作品が生まれました。

Olaf Bender
ラスターノートンの歴史を考えると新しいテクノロジーの表現の他にも、実際、古いテクノロジーを使用した表現も使ってることがわかります。例えば本とかありますね。ネオンにフォーカスすると、ずっと観れるような良さがあります。あとモジュラーシンセとかもよく使います。

「このインスタレーションについて基本的なことについて何かあれば教えてください」

Olaf Bender
マルチチャンネルというシステム部分が特徴的で、有名なベルリンのクラブでもよく使ってました。あとは、ビュルッセルでもやりましたね。
 
Carsten Nicolai
空間が工場跡地だったので、歩き回ったりもできることが面白いポイントです。また世界各地で行える、旅ができるインスタレーションとして作りました。インスタレーションの体験時間は、今は4人で45分なんですが、これから、増やしたりもできる拡張性をもってます。今回の20周年でやったことですが、これはほんの1部で、製作中のドキュメントの本、ライブショーケースも含めて20周年だと思っていただければ。
 
Olaf Bender
ラスターノートンは、クラブやアートシーン・ギャラリーなどのカルチャー間を行き来する表現なんですよ。

「レーベル運営について。デザインについて教えてください」

Olaf Bender
お金がどうこうというよりは、どう表現をアーティスティックにするかという部分に着目してますね。だから必然的に、レーベルという部分の割合以前に、アイデアをどのようにして、ディストリビューションするかというのが重要になってくる。だから結果的に商品よりはアイディアを形にしたもの意味合いが強くなります。でも、だからといって、ポリシーが厳しいわけではありません。友達と一緒に作ってる、ディスカッションして進める中で、そぎ落としてそぎ落として空っぽになってる中で生まれたプロダクトがほとんどです。

Carsten Nicolai
デザインはミニマルというのを徹底してますね。それは、アーティストの顔写真が乗っているジャケットへのアンチテーゼという意味合いも含まれているからです。それによって、音に集中してほしいメッセージがあるからです。

Olaf Bender
今は音楽が消費されている時代です。その中で、時代を超えてもずっと聴き続けられるものは何だろうかということを意識して制作しています。

「今回、カタログを制作していたりしていますが、商品化などはしますか?」

Olaf Bender
印刷などのプロダクトが固まれば、今年中には出したいとは考えてます。いつも通り遅れてるけど。笑。少なくとも今年中には出したいね。今考えてる感じだと400ページぐらいの厚みの電話帳みたいなのになりそう。バインダー・アーティストのプロファイル・あと、これらを活用したインスタレーションになる可能性もありそうかな。
 
Carsten Nicolai
それで、これはリミテッドな形で1000部しか生産しないものにする予定ですね。本というメディアの形式上、時間がかかる存在ということもあるため、ソールドアウトになったら、次のプロジェクトに移行する形で考えてます。

「コストを抑えるため、紙質などは安価なものになりがちですが、ラスターのクオリティは一定ですよね。ドイツのデザイナーに聞いても、そのあたりはこだわりをもってるという評判を耳にします」

Carsten Nicolai
もちろん、そういったコストやクオリティを含めたシュミレーションというか、テストはしています。実際、コストより自分の人生で好きなことをやった中で、パーフェクトのものを作りたいという形を優先してます。

「レーベルの名称、ラスターノートンの正式名称(archiv für ton und nichtton)について – アーカイブというワードが、レーベルの中でのキーワードかと思いますが、これはそもそも最初から念頭にあったのでしょうか?それとも、この20年の間でコンピューターが進化したことによって生まれた影響が、アーカイブという存在自体に何か変革をもたらしたのでしょうか?」

Carsten Nicolai
このトピックに関して、実はクレイジーな理由があります。それは、アーカイブはインストールすることができないということです。アーカイブから見えることは、未来を示唆しているということです。それは、何か限定的に聞かれるモノ、音楽ではないということ。つまり、視野を広げてくれるような存在・音楽としての「アーカイブ」という言葉を使っています。

Olaf Bender
我々が、20年前にこの名前をつけた時、テクノレーベルとしてはクールではなかったと思います。ですがこの概念は不思議なものでしたが、マニュフェストを付け加えることで意味をもたらすことができたような気がします。

「これまで、デジタル趣向だった印象も感じますが、なぜアナログにもフォーカスしているのでしょうか。内容や性質を考えると変わりそうにも感じます」

Carsten Nicolai
まぁ、アナログの前提として、モノは存在感はありますし、アーティストは大きい絵のほうが喜びますからね。笑。そういった理由があるからこそ、様々なフォーマットでリリースしています。
 
Olaf Bender
ラスターノートンの音は、特殊な周波数を使っているので、制作された物のいくつかは、アナログでは出せないのもあります。そういった中で、最近のリスナーの環境では、CDプレーヤーでは聞けないという理由があったりするのでデジタルリリースとの組み合わせを行うことが最適だと思っています。

 
Carsten Nicolai
アナログは古いフォーマットですが、手触りがいいですよね。そういった特徴を持つアナログ専用のカットは、違う楽しみ方もできる。これは、デジタルの再解釈のようなものです。

「レーベルとしての活動についてお伺いします。ドイツではどのように活動していますか?ドイツの文化機関がサポートする環境もある中、自分たちでやろうとしても、成り立たない時もあると思います。ラスターノートンはどうしてますか?」

Carsten Nicolai
全てのプロジェクトではないのですが、パフォーマンスなどはサポートをお願いしたりする時もあります。ラスターノートンにはドイツ以外の国のアーティストもいますが、他のどの国もサポートシステムがしっかりとあり、それはとても助かっています。プロジェクトによって、色々なパターンがあって、プロポーザルもある中、パンディングが手に入らなければ自分のお金でやります。
 
Olaf Bender
我々はコマーシャルなレーベルではなく、小さいレーベルなので、ヨーロッパ圏内では航空券の手配などは、比較的容易に、対応できたりします。しかし、こういったレーベルでは、アメリカなどはサポートされづらい点もあります。こういった特徴がある中で、小さいレーベルでやっているのは、意義深いものでもありますし、大変な面もあります。
 
Carsten Nicolai
ラスターノートンがあるドイツは、比較的お金持ちの国かもしれませんが、そういった活動のエネルギーは、バジェットのないところ、アーティスト、プロデューサー、デザイナー、個人的な繋がりで生まれています。そういった繋がりが持つクリエイティブなものが、モチベーションになって、自分たちのやりたいことをやるのが重要だと考えてます。簡単に言うと、家族経営のようなものです。例えば、今回制作しているカタログの写真は、Olafの息子が撮影しました。他には、お母さんも働くことがあります。こういった家族の助けによって全てが作られているんです。友達の友達がやっていたりすることもあります。こういったものは、お金が介在しない関係でやっていたりします。

いかがだっただろうか。ラスターノートンというレーベルを通し、音楽を聴くだけではなく、カルチャーを体験するレーベルとしてのクリエイティブや思想を感じていただけただろうか。彼らが話す「アーカイブ」という言葉の意味や、音や空間を通して感じられる経験、プロダクトに込められたフィロソフィーなど、少しでもお伝えできれば幸いだ。20周年を迎えたラスターノートン。そして、Mutek.jpというイベントの今後の展開や動きにも、ぜひご注目いただきたい。

MUTEK JP 2016
WWW X + WWW : NOCTURNE 1 + A/VISIONS 1
日 時:11月2日(水)開場18:00/開演19:00
会 場:WWW X & WWW
出演:
WWW X : NOCTURNE 1/RASTER-NOTON 20th Anniv. Alva Noto (DE)
Byetone (DE)
Dasha Rush (RU)
Anne-James Chaton (FR)
Robert Lippok (DE)
Ueno Masaaki(JP)
WWW : A/VISIONS 1
Martin Messier (CA): FIELD Herman Kolgen (CA): AFTERSHOCK Herman Kolgen (CA): SEISMIK
Max Cooper (UK): Emergence A/V show Intercity Express (JP)
 
Red Bull Studios Tokyo : DIGI_SECTION
日 時:11月3日(木)12:00~22:00 料 金:入場無料
会 場:Red Bull Studios Tokyo (5F)
 
WWW : A/VISIONS 2
日 時:11月4日(金)開場18:00/開演19:00
会 場:WWW
出演:
Maotik+Metametric: DURATIONS
Herman Kolgen: INJEKT
Robin Fox : RGB LASER SHOW
Shingo Shibamoto × MMM
 
WWW X : NOCTURNE 2
日 時:11月4日(金)開演23:00
会 場:WWW X
出演:
Midnight Operator (CA)
Max Cooper (UK) – DJ Set
Pheek (CA)
Ena (JP)