【INTERVIEW】ボールペン1本で魅せる画家・イラストレーター SHOHEI

誰もが手にしたことのあるボールペンで描き上げる、緻密で繊細、そして迫力と緊張感が伝わる作品の数々。オリジナル作品に限らず、商業作品やアートワークまで、爽快で切れ味の鋭い絵は、見る者は誰しもが息を飲む。
国内では5年ぶりとなる個展「灰色ノ煙」を開催した、ボールペン1本で世界へ名を広げる画家・イラストレーター、SHOHEIのインタビューを行った。

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ー自身では2度目の札幌ということですが、印象を教えてください。
夏の札幌は初めてですがすごく良いですね。北海道に初めて来たのは今年の1月なのですが、ちょうどその日が記録的な大雪が降ったみたいで前が見えないぐらいでした。東京ではそんなことがないので、雪の印象がかなり強く残ってましたね。
 

ー今回の展覧会「灰色ノ煙」プロモーション映像では雪にドローイングしていましたね。
前に東京で雪が降った時にふざけてやったのをinstagramかなんかでアップしていて、それを友人が見たらしく来た時にはもうスプレーが用意されていました。笑 けど酔ってベロベロだったので実際にはすごい馬鹿騒ぎしながら描いてましたね、漢字とか間違ったりして。「札幌の幌が分からねえ〜」って。笑 実際の映像より楽しく描いていました。
 

ー札幌でなにかおいしいもの食べましたか?
回転寿司行きましたね!あの値段で美味しいのを食べれるのは東京では信じられないな〜と思いました。それと豊平峡温泉でカレーも食べました。温泉入ったら急にカレーの匂いとかすごい衝撃的で。笑 中でインド人がばんばんナン焼いてるし、なんか違和感の残る温泉ですごいよかったですね。今回一緒にレコードを製作したCutsighさんも「LOOP JOINT」で札幌に来ていたので一緒に行きました。
 

ー好きな食べ物は?
寿司、魚全般、ステーキ、ラーメン、てんぷら、うどん、、わりと王道なものが好きです。あ、あとちゃんぽんですね。母が長崎出身なので、子どもの頃から長崎に毎年行ってて、それから定期的にちゃんぽんは食べたくなります。
料理もこう見えてやるんですよ。貧乏で一人暮らしだったので、餓死しないようにやってただけですが。一時期ハマってたのはチャーハンをどれだけ好きな味にできるかとか。笑
 

ー男なら一度は通るやつですね。
鉄鍋が欲しいとか、絶対やるでしょ!笑
 

ーそのうち「家の火力じゃ無理」だとか。
やるやる。チャーシューとか角煮とか、良い出汁とるとか、男はなんか液体好きですよね。笑 無駄に良い昆布買ったりしたりね。北海道来たから昆布買って帰ろうと思って。いやー北海道最高。食いもんがうまいっていうのは外せないよね。
 

ー海外で活動されていた時の食事はどうでしたか?
一番印象に強かったのがイタリアですね。ずっと現地のイタリア人と一緒にいたのですが、イタリア人は食にすごいプライドと誇りを持っていて、「これがミラノで一番うまいパスタ屋だ!」ってそこでトマトソースのシンプルなパスタを食べされられて。「どうだうまいだろ!シンプルが一番うまい!」って言われるんだけど、他の人は全然別なものを食べてるんだよね。次の日別なイタリア人にも「ここがミラノで一番うまいパスタ屋だ!」って別な店に連れて行かれて、「おまえはこれを絶対食え!」ってまたトマトソースのパスタ食べさせられて。ピザもパスタもラザニアも、ずーっとトマトとチーズとひき肉。日本人はまずこれを食え!って、必ずトラディショナルを食べさせられるんだよね。昨日も食べたって言っても「あそこのはおいしくない」って言って全然譲らないし、家でふるまってくれるのも「おばあちゃんの誰にも教えたことのないレシピがある」って言われて、そこでもトマトとチーズとひき肉。笑 もちろんめちゃくちゃうまいんだけど、2〜3週間毎日で本当に飽きた…笑
 

ー海外では現地の若い子たちが積極的にコミュニケーションを取りに来るそうですね。
アメリカとかヨーロッパとかはぐいぐいですね。ギャラリーのある場所にもよるんですけど、スケーターとか若者とかが集まるようなところだと、現地で知り合ったやつの家に行ったりパーティに行ったり。繋がるのは早いですね、海外は。現地の生活を見るのが好きなので、同世代の家行ったり、飲み屋行ったり、ストリップ行ったり。旅行より滞在する方が好きですね。飾らないところを見たいです。飯とかどういうところが行きたい?って言われたら、現地の金ないやつが食ってるところとかが興味ありますね。
 

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「ループ」というキーワードを元に、作品を手にする喜びと作品を作る喜びが無限に続く、Cutsighとのプロジェクト、「LOOP JOINT」によるアナログレコードが制作された。今回の展覧会では、そのピクチャー盤とジャケットに寄せた、新作8点を展示。
モチーフには警察官が選ばれ、決まってどれも良い子のみんなには見せられないポーズだ。
 

ー作品のモチーフで警察を選んだのはなぜでしょうか?
元々制服が好きなのですが、警察官のシリーズを一回がっつり描いてみようと思った時に、今回のアナログレコードの企画がちょうど来たので。そこにはめる絵のリストを20個ぐらい考えたのですが、自分の描きたい絵が一番気合い入るので、変に合わせないで警察官を選びました。
“アルバムに添えるアートワーク”という風にしたくなかったので、がっつり主張してやろうと思って。アルバムの内容も世界観が自由度の高いものだったので、それを先方に伝えたら快諾してくれました。
 

ー先にテーマを決めて描くか、それか描いていくうちに、あとから決めますか?
今回はそうでしたね。最初に警察官描きたいっていうのがあって、ただ警察官描くだけじゃおもしろくないので、かっこいい仕草がほしいなって思った時に、好きなタバコだったんですよね。他にいい仕草ないかなって思った時に、覚せい剤とかシンナー吸ってるとかコカイン吸ってるとかそういう感じで考えてたんだけど、さすがにアルバムとして形に残るのにはそれは不適切かなって自粛しました。笑
 

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ーSHOHEIさんは普段手描きですが、アナログ盤ということでアナログな繋がりを感じましたか?
めちゃくちゃありましたね。今回のレコードは針を落としたら回り続けるループレコードっていうレコードでしかできない再生方法で、しかも1曲1.33秒のループなのでデータでも売れないですし、両面に絵が入るピクチャー盤もアナログならではの表現ですよね。
しかも12インチっていうのが絵を落とし込むのにちょうど良いサイズなんですよね。普段小さめに書いて拡大したり、CDジャケットの場合は大きく書いて縮小したりしているのですが、今回は原寸で描いています。
レコードも職人さんがマスターに1本ずつ手作業で溝を削ったりと、かなりアナログがてんこ盛りな企画でした。
 

ーご自身もレコードやDJなどのカルチャーは通ってきましたか?
中学生の時に音楽は色々聴いていましたが、電気グルーヴがマイブームになって、そこからYMOとかクラフトワークとかそこらへんから聴くようになってました。それから高校生の頃にテクノにハマって、まず最初にターンテーブル1台買って、友達の家でDJごっことかしてましたね。Underground Resistanceとか大好きだったし、ジャーマンテクノとか、基本ミニマル、ハードミニマルとか男臭い音が好きでしたね。
それにメタルとかも好きだったし、あと当時メロコアとかすげー流行ってましたね。ハイスタのライブも2〜3回行ったし、レッチリ、ブラー、オアシスとかも好きでした。
 

ー音楽以外に傾倒していたものがあれば教えてください。
僕らの世代はゲームと漫画の世代だと思うんですよね。ファミコン、スーファミ、プレステ、ゲームで考えると面白い時代にいたなと。プレステが出た時の衝撃は半端なかったですし。けどファミコンとスーファミが家になくて…いや、親父は持っていたんだけど、おれは遊べなくて。笑 親父の仕事部屋には一通りあったんですけど、遊ばしてくれなかったんですよね。笑 だから友達の家でやってました。プレステからですかね、自分で遊べるようになったのは。
 

ーそういった子供の頃に遊んでいたものや見ていたもので影響されているものはありますか?
やっぱジャンプですかね。影響っていうか、絵を描く面白さを感じたのはドラゴンボール、ドラクエ、鳥山明の絵で。やっぱワクワクする絵じゃないですか。そのときが一番絵を描いてたかもしれないです。学校から帰ってきてずっと絵描いてました。他にはミニ四駆もやったり、超普通の子供でしたね。
 

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ー広告とオリジナルの作品では気持ちの違いなどはありますか?
仕事はだいたい指定があるので作業になりがちというか、締め切りもあるし、本当は大きく描きたかったけど時間がないので小さいサイズで描くとか、納期があるのでここまでしか描けなかったとか言えるけど、好きな絵はそういう言い訳はできないので、入り込み方が違いますね。
 

ー絵にメッセージを込めるとか、絵からメッセージを発信したいという気持ちはありますか?
メッセージを発信するには絵はすごい非効率的だと思っているので、世の中を変えようとかそういうことは絵に乗せたりしないですね。
 

ーひとつの作品の中でもかなり描き込まれると思うのですが、完成や止め時はどこになりますか?
鉛筆とか絵の具とかデジタルよりは止め時がはっきりしています。ボールペンは消せないので、失敗したらそのまんま失敗が残りますし、消せちゃうと逆に終わりが見えないですね。僕は全体的に描いていかないで一箇所ずつ完成させて描いていくので、全部が書き終わると終わりになります。
 

ーでは頭にしっかりとした完成図があるということですね。
そうですね、描き始める前に完成図は頭にあります。失敗もできないので、集中力を高めるのに時間をかけていますね。
 

ー爪や歯を緻密に描き込まないところなど、最後まで描き込まないのを粋だと展覧会のアーティストトークでも仰っていましたが、それは日本的な粋という考え方からでしょうか?
僕が日本人だから、日本人的な感覚かもしれないですね。全部描いちゃうとなんかつまんなくなっちゃうんですよね。背景も描かないことも多いのですが、絵的な見せ方として全部を描いちゃうと情報が多いというか。浮世絵や東照宮の逆さ柱とかもそうですが、抜きがあって未完成なぐらいが良いですね。
 

ーこれから挑戦したいこと、やりたいことを教えてください。
まず今友達のアーティストと進めているアート自販機を作ろうとしていて、今年中に出せたらいいなと思っています。その自販機でしか買えない作品を、1アーティストひとつの棚に置いて売るプロジェクト。あとは僕のウェブショップをちゃんと作ろうと思っています。グッズの問い合わせが多いし海外でニセモノとか勝手に出されてたりしてあんまりよくないなって思って、これは10月ぐらいにはオープンするかな。それと子供用の絵本ですね。もうアイディアも絵も決まっていて、これはタイミングを見て描こうと思っています。あとは絵とは関係なくて、普段考えていることとか、小説、文章を書きたい。
あ、それと映画とかアニメとかの絵コンテ。映画とかは制作費がいくらで、とかスタッフがどうのこうのとか大人の事情が絡んできたりして大変そうだから、絵コンテだけならいきなり地球が爆発したりとか描けちゃうし、1万人が乱闘してるとか映画だととんでもない予算かかっちゃうけど、絵コンテだけなら好き勝手できて自由だから、それで映像っぽい遊びができたらなと。
 

ー完成がマストじゃない絵コンテですね。
そうそう。絵コンテだけの雑誌とかあっても良いんじゃないかと思うんだよね。映像作家とか映画監督とかアニメ監督とかジブリの人とか、実際に映像を作らなくても、本として出てたら面白いと思うんだよね。
 

ーやりたいことは尽きないですね。
そうですね。やりたいことは常にあります。ただ手を動かすのは遅くて…。考えている時が一番楽しいですよね、無責任に考えられるから。笑

 
 

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SHOHEI
1980年東京生まれ。イラストレーター。
主にボールペンを使用してイラストを制作。
広告やCDジャケット等の商用イラストを手がける傍ら、オリジナル作品を世界各国で展示・発表。
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撮影協力
A.dore